【第3章】第1節 絶縁用保護具
1.絶縁用保護具の種類と使用目的
絶縁用保護具は感電を防止する為に作業者自身に装着するもので、電気作業用保護帽、絶縁衣、絶縁用ゴム手袋、絶縁用ゴム長靴等があります。いずれも絶縁用保護具の構造、絶縁性能等については厚労省告示「絶縁用保護具等の規格」に規定されています。
また、着用については「事業者は低圧の充電電路の点検、修理等充電電路を扱う場合において感電の危険が生ずるおそれのある時は、作業者に絶縁用保護具を着用させなければならない」と規定されています。「安衛則第346条(低圧活線作業)」
1)電気作業用保護帽
電気作業用保護帽は、頭部を充電部との接触や機械的衝撃から保護する為に使用します。特徴として全体にいかなる穴も開いていません。
使用前点検として、ヘッドバンドの切れはないか、亀裂はないか等を見ます。
取扱い上の注意点として、
①真直ぐかぶりアゴ紐は完全に締める
②乱暴に扱ったり投げたりしない
③腰掛の代用など、無用の荷重をかけない
④表面の汚れなどを処理するときは化学溶剤を使用しない(中性洗剤を使用)
⑤一度でも衝撃を受けたものや、外観に異常のあるものは交換する
一般の保護帽ではなく、「電気絶縁」を主とした保護帽であることを認識しておくことが重要です。
※労働安全衛生法上の保護帽(ヘルメット)には、飛来落下物保護用・墜落時保護用・絶縁用(電気用)があり、それぞれの基準(構造規格)が定められています。また、これら全ての基準を満たしたものや各種シールド付きのものなどもあるので、作業内容に適した保護帽を選択する必要があります。
なお、一般社団法人日本ヘルメット工業会では、「PC、ABS、PE等の熱可塑性樹脂製保護帽は使用開始より3年以内、FRP等の熱硬化性樹脂製保護帽は5年以内に、それぞれ外観に異常が認められなくても交換」を推奨しています。ヘルメット内側の規格等表示部分に「使用開始年月日」記入欄も設けてありますので、新たに使用開始する際には記入しておくようにしましょう。
2)絶縁衣
絶縁衣は、活線作業及び活線近接作業時に電気用ゴム手袋を併用して腕、肩からの電気の流入、流出を防ぐ為に使用します。
使用前点検は、絶縁衣の表裏ひび割れ、亀裂切り傷などの有無、縛り紐・止め釦等完全についているか、全体に激しい汚れや型崩れが無いかなどを確認します。
絶縁衣
使用上の注意は、止め釦・縛り紐等を完全に留め、作業中は電線ケーブルの先端端末部分等で傷を付けない様に注意することです。また、損傷を防ぐ為、持ち運びや保管時においては工具や材料などと区別し、丁寧に扱う事が重要です。
3)絶縁用ゴム手袋
絶縁用ゴム手袋は、活線作業及び活線近接作業時に手からの電気流入、流出を防ぐ為に使用します。
絶縁用ゴム手袋(低圧用)と手袋カバー
使用前点検は、目視や部分的に引っ張るなどして傷の有無を見ます。特に指と指の間は良く開いて確認します。最後に空気試験(袖口部分を重ね折りして巻き込み手首あたりで止め、ふくらんだ部分を押し空気漏れの有無でピンホールを確認)で調べます
使用上の注意として、電気用ゴム手袋の上には保護手袋をはめて使用します(高圧用の場合は特に)。極力手に合うものを使用し、袖口を曲げて使用しないようにします。保管・持ち運び時においては損傷を防ぐ為工具等を含む一般材と混在させない様にする事や、直射日光・高温を避けることも大切です。
4)絶縁用ゴム長靴
絶縁用ゴム長靴は、活線作業及び活線近接作業時に電気用ゴム手袋などと併用して、足からの電気の流入、流出を防ぐ為に使用します。使用前点検は、異常な汚れや変色・外部内部の傷などの有無、かかと部分の型崩れと接着部分の剥がれがないかなどを調べます。また、小さな孔でも感電の原因となるため、空気試験(電気用ゴム手袋と同様で巻き込んで膨らんだ部分を押し空気漏れの有無でピンホール確認)を実施します。
電気用ゴム長靴(左)と先芯入り(右)
使用の際は作業開始直前に履くようにし、目的外の一般行動での使用は厳禁です。極力サイズの合ったものを折り曲げないで履き、ズボンの裾は必ず長靴の中に入れます。突起物を踏んだり、引っ掛けない様に歩行や作業行動にも注意します。持ち運びや保管の際は収納袋・ケースに入れて損傷や劣化を防ぐことも必要です。
絶縁用保護具は、電気設備における充電部の取り扱いや近接作業の際、感電防止の観点から作業者自身が身に着ける重要かつ貴重なものです。各保護具について、使用目的と使用にあたっての注意を述べましたが、点検などの維持管理を怠らず、作業の際確実に装着することなど、作業者自身も災害の防止に努めなければなりません。
2.定期自主検査
なお、これら保護具のうち、「交流で三百ボルトを超える低圧の充電電路に対して用いられるもの」についての定期検査は、「6か月以内ごとに1回、定期に、その絶縁性について自主検査を行わなければならない」ことと、「自主検査を行った記録を3年間保存しなければならない」ことが、労働安全衛生規則第351条に定められています。
耐圧試験用水槽
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