【第2章】第1節 電気設備とは
1.建物施設における電気設備
今や電気設備は人が生きていくうえでなくてはならない設備です。身近な電気設備といえば、家庭内で使う電化製品や照明器具、仕事場の電動工具・生産機械などが浮かびます。ここで取り上げる電気設備は、これらに加え建物や施設内で様々な場所に電気を送り届ける為の設備や防災用の設備を含む広範なものを指します。
電気は建物施設に対して、「見えない縁の下の力持ち」等と言われます。
建物を人間に例えると建物の構造体であるコンクリート(鉄骨・躯体)で出来ている柱、壁、床などは骨格や内部組織で、壁紙やカーペット・塗装等は皮膚、エアコンなどの空調設備は呼吸器系とすると、電気は何に相当するのでしょうか。
電気は様々な機械や装置を動かす為の力として使われていますから、身体で言えば、様々な臓器や筋肉を動かす為に循環する血液の役割に似ています。また、電気エネルギーとしてだけではなく、あらゆる信号や、情報伝達の為にも多く使われています。身体で言えば、神経の働きもしています。
つまり、見えないところで大きな役割を果たしているのが「電気設備」であり、「縁の下の力持ち」と呼ばれる所以です。
この項では電気設備がどの様な所に置かれ、どの様な役割を果たしているのか、項目に従って見て行きましょう。
2.電気設備の分類と役割
工場(プラント)・大型ビル・一般ビル等の主力設備、付帯設備を問わず設置されている主な電気設備は以下のものがあります。
:受変電設備(特高、高圧低圧・低圧含む)・発電設備・中央監視設備・幹線設備・動力設備・電灯コンセント設備・拡声設備・映像音響設備・通信(電話交換・構内情報・無線通信)設備・テレビ共聴設備・自動火災報知設備・ITV(監視カメラ)設備・入退館設備・駐車場管制設備・避雷針(落雷保護)設備等。
また、消防防災機関では、受変電に関しては非常電源専用設備(消防署認定)、動力設備に関連して発電機非常時自動運転設備・屋内外消火栓設備・水噴霧消火設備・泡消火設備・防排煙設備・連結送水管設備、電灯コンセントに関連して非常コンセント設備・非常警報消防署連動設備等。
これらは具体的にどの様な役割を果たしているでしょうか。
1.電気エネルギー
日常身近な事では、照明という機能を果たす為、電気を「光のエネルギー」に変え「照明」という機能・役割を果たしています。電気ストーブやハロゲンヒーターは、電気を「熱エネルギー」に変え「暖房」という機能・役割を果たしています。クーラーや冷蔵庫等は、「暖房」とは逆で、何かを「冷やす」為に電気を使っています。このような機器は機器内部で、冷媒(熱媒体と成るアンモニアやフロン等)を圧縮する為に、コンプレッサーを使ったり、放熱や空気循環の為にファンを使ったりします。モーターが電気を「運動エネルギー」に変えているのです。
一例として、照明・クーラー・冷蔵庫について取り上げましたが、電気は「エネルギー」という役割を果たしています。
2.各情報の伝達
「糸電話」は「糸の振動」を利用した「音声信号」です。これにも色々な条件(距離・糸の長さ・たるみ・天気等)があり良く聞こえたり聞こえなかったりします。この原理を利用して、糸電話の代わりに電線を使い、糸の振動の代わりに電気の振動を使えば、糸電話と同じように音声信号を伝達することが出来ます。これが電話の原理です。電話は、音声を伝達する為の手段として電気を使っています。
現在目覚ましく発展しているインターネットでも情報伝達の為の手段として電気を使っていますし、パソコンの中でも様々なデータが電気信号で処理されています。パソコンや電話の様な情報機器や通信機器では、電気は「情報伝達の為の信号」という役割を果たしています。建物内のインターホンや防災設備・防犯設備等でも、電気は「情報伝達の為の信号」の役割を果たしています。
以上の様に、電気は大きく分けると、エネルギーとして使われる場合と、情報伝達の為の信号として使われる場合がありますが、電気エネルギーとして使う分野は「強電」と言い、この設備を強電設備、強電で使用する機器を強電機器と言います。
また、電気を情報伝達に使う分野を「弱電」と言い、この設備を弱電設備、弱電で使用する機器を弱電機器と言います。
電気の役割と用途
電気 | はたらき | 役 割 | 設備・機器例 |
---|---|---|---|
エネルギーとして使う(強電) | モーターを回す | 冷暖房設備 | |
給排水ポンプ | |||
エレベーター | |||
発熱 | 暖房機器 | ||
調理機器・IH | |||
光を発生させる | 照明器具 | ||
情報伝達信号として使う(弱電) | 異常発生状態伝達 | 防災設備 | |
防犯設備 | |||
音声伝達 | 電話 | ||
インターホン | |||
映像データー伝達 | テレビ共聴設備 | ||
L A N |
3.電気設備の工事及び管理について
1.電気設備の工事について
工場・プラント・建物・施設等の電気設備工事を行うのが電気工事会社です。
電気工事を行う作業者は工事内容によっては電気工事士法の定めにより「電気工事士資格」が必要であり、作業内容によっては労働安全衛生法に係る特別教育が必要となる場合があります。
また、電気工事士などの作業を監督するのが、電気工事会社の現場代理人や主任技術と言われる責任者です。現場代理人や主任技術者は、「建設業法」で定められている工事現場の責任者のことで、現場代理人は工事現場における工事会社の代表者であり、主任技術者は技術面の管理者です。場合によっては現場代理人と主任技術者を一人で兼務することもあります。
2.電気設備の管理について
工場・プラント・建物・施設等の電気設備は、維持管理の為に電気主任技術者を選任する必要があります。選任された電気主任技術者は、電気設備を正常な状態で使用するため、法に定められた事項を基に各種点検等を行わなければなりません。なお、各種点検等は規定上3年間の保存が義務付けられています。
また、一定の規模以上(建物の受電設備)に該当すれば、電気工事の際も電気主任技術者が監督しなければなりません。
電気設備は多くの技術者で成り立つ
電気設備を設計する技術者は機器メーカーからの情報を得て、他に関連する機器との接続方法を考えたり、機器設置のレイアウトを検討したりします。
工事する技術者は設計技術者から情報を得て工事の施工を考えたり、工事施工の為の資材を発注したりします。時には要求されている条件の中で最も良い結果を得る為、技術者から設計技術者に提案する事も有ります。
このように多くの技術者がお互いに協力し合い知恵を出し合って、電気設備が成り立っているのです。
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